今回は東野圭吾さんのミステリー小説、「人魚の眠る家」の前半のネタバレと感想をお伝えします。
東野圭吾さんと言えば、「容疑者Xの献身」などの、ミステリー作家として有名。
当時は、「作家デビュー30周年記念作品!」と宣伝されてあり。
本屋さんにたくさん置いてあったので、読んでみようかなと思いました。
なお、2018年11月16日に映画化されました!
気になる人は、ぜひ手に取って読んでみてください!映画も要チェックです。
人魚の眠る家の第4章以降は、ぜひ自分の目で確かめてほしい
個人の感想になりますが、第五章以降が面白く。
第四章まではそれの下準備・伏線です。
第4章あたりから、ネタバレなしで読んでほしいです。
人魚の眠る家の登場人物の紹介
※登場人物が意外に多いので、全員の紹介は避けます。(アンダーラインは、特に主要となる人物)
- 播磨和昌(はりまかずまさ)
ハリマテクスの社長。不倫が原因で妻の薫子と別居となり、離婚寸前。
- 播磨薫子(はりまかおるこ)
和昌の妻。同時通訳で和昌に雇われたことがきっかけで知り合い結婚。二児の母。
- 播磨瑞穂(はりまみずほ)
和昌と薫子が結婚した2年後に誕生した女の子。
プールでの事故で、「おそらく」脳死となってしまう。
- 播磨生人(はりまいくと)
瑞穂の誕生の2年後に誕生した男の子。
- 播磨多津朗(はりまたつろう)
和昌の父。コンピュータ業界への進出に会社の経営危機をよって救った。
- 千鶴子(ちづこ)
薫子の母。「プールでの事故は自分のせいである」と責任を感じていることから瑞穂の介護をする。
- 美晴(みはる)
薫子の二歳下の妹。商社マンと知り合い結婚。
- 若葉(わかば)
美晴の娘。瑞穂と同い年であり、プールでの事故の日も一緒に遊んでいた。
- 星野祐也(ほしのゆうや)
ハリマテクスの研究員。研究内容は、身体が不随となった患者の生活の介助をすること。
- 川嶋真緒(かわしままお)
星野祐也の恋人。動物病院の獣医であり、星野の研究内容に興味を持っている。
- 榎田博貴(えのきだひろき)
薫子が睡眠薬を処方してもらうために、訪れたクリニックで出会った精神科医。薫子の不倫相手である。
- 宗吾(そうご)
帽子を播磨家の中に落としてしまい、その際に、眠っている瑞穂を見た子供。
人魚の眠る家のあらすじ:プロローグ
ある日、「お屋敷」の中に風で帽子を、飛ばしてしまった宗吾。
中に帽子を拾いに行き、家の中を覗くと、そこには車椅子に座って眠っている女の子がいた。
その光景を目にして以来、女の子のことから、頭が離れなくなった宗吾は、もう一度少女の姿を見ようと、紙飛行機を「お屋敷」に飛ばすことを思いつく。
しかし、今度は少女はその時にいなかったため、あきらめて帰ろうとしたとき、車椅子を押している女の人(=薫子)が入ってきた。
車いすにはあの女の子(=瑞穂)がやはり眠ったまま、座っています。
「まだ起きないのかな」と宗吾がたずねると、
「うん・・・そうね。今日は起きないんじゃないかな」
と女の人は答えました。
そのまま屋敷を後にした宗吾は、それ以来いつでも少女の顔を忘れることはなく、
「どういうことだろうか。」
と考えるようになります。
そして、宗吾は女の子に対して、
人魚
のイメージを持つようになります。
宗吾は、一見すると物語との接点が少ない
作中では、「間もなく宗吾は、「人魚」のことを思い出すどころではなくなる」とされています。
ちなみに、宗吾はこのプロローグ以来、第六章まで再登場しないし、物語との直接的な接点は少ないです。
こういうシーンをはじめに持ってくるあたりが東野さんのセンスなのかなと思います。
人魚の眠る家のあらすじ:第一章~今夜だけは忘れていたい~
薫子と和昌の夫婦関係
宗吾の、謎めいたエピローグから一転して、薫子と榎田が食事中です。
別の意味で、ミステリアスな雰囲気が漂います。
離婚を考えていた薫子、あれこれと準備をしてきた榎田。
しかし、何かが薫子を思いとどまらせていたことから、榎田の部屋への誘いを断り、薫子は帰宅しました。
この地点では、「一段階上の関係」までは至っていません。
他方、ハリマテクスの社長として多忙な日々を送っていた和昌。
- 研究報告を見聞きするシーン
- 星野祐也と研究内容についてやり取りするシーン
から、企業人として充実しているのがうかがえます。
しかし、家庭人としてはどうか。
生人の出産前に温泉旅行に行くなど、不倫をした和昌。
一人目の子供の瑞穂が私立の小学校受験を控えており。
いろいろなことが分かりかけているだけに、
「夫婦間のできごとを子供たちに感づかせたくない」
となり、一年前から別居することとなりました。
プール事故の一報
そんなある日、小学校受験の面接の予行演習のために、予備校に出向いた薫子と和昌。
- 瑞穂
- 生人と、薫子の母の千鶴子
- 薫子の妹の美晴とその娘の若葉
はプールに遊びに行っています。
そんな時に、播磨夫妻は、「瑞穂がプールで溺れた」と事故の一報を薫子の父である茂彦から聞きます。
また、ICU(集中治療室)に運ばれたこともわかります。
2人が病院に到着すると、医師の進藤から、「自発呼吸もなく脳死である可能性が高い」という宣告を受けます。
すると、進藤は和昌と薫子に、現在の治療は延命措置であることを断ったうえで、臓器提供の意思の有無についてたずねます。
さすがに、和昌は
「明日までに答えを出すということでどうでしょうか」
と進藤に伝えました。
二人は、薫子の家に帰り話し合いを始めます。
和昌と薫子は双方の両親にどうすべきかを聞きますが、回答は、どちらも「和昌と薫子に任せる」というものでした。
(正確には和昌の母は食道ガンで他界)
重大な決断は当事者に丸投げ
まぁ、こういう問題は双方の両親のように、当事者が決めるように促すことも想像つきますがね…。
和昌と薫子が悩んでいるからこそ聞いているのに、余計に自分たちだけでの決断を迫られました。
(結果として、和昌の父の多津朗の発言が間接的にアドバイスになりましたが、姿勢としては丸投げ。)
そこで、二人は、「瑞穂ならどう答えるか」ということを考えて臓器移植を決意します。
(瑞穂が優しい子であったことを踏まえて)
決断の瞬間に・・・
臓器移植の瞬間がやってきました。
移植コーディネーターがやってきて、臓器提供についての疑問点と最終の意思確認を
行おうとした際に、瑞穂の手が動いたのです。
和昌、薫子からしたら
- 「瑞穂は死んでなんかいない」
となります。
瑞穂の手が動いたことがきっかけで、播磨夫妻は、臓器提供を拒否することにしました。
しかし、医師の進藤によると
- 脳が機能していなくとも脊髄反射によって体が動くことがある
- 進藤自身の見解に変わりはない
との説明を受けます。
臓器提供を拒否しつづけるとなると、瑞穂を介護する必要もあります。
薫子は事情を考慮して
- 離婚問題は白紙にする
- 榎田にそのことを伝え、会うのをやめる
ことにしたのです。
人魚の眠る家のあらすじ:第二章~呼吸をさせて~
プロローグと第一章は、話を理解してもらうために少し長く書きましたが、第二・三章はあっさりと書きます。
実際のボリュームも第一章よりも少なめです。
第二章のざっくりとした流れは
- 人工呼吸器なしでの呼吸が可能であることを和昌が知る
- 和昌は妻のためにできることはしてやりたいと考えていること
- 薫子はできることは全て瑞穂にしてやりたいと考えていること
- 瑞穂の容体が予想に反して安定している
- 瑞穂の在宅介護が可能となる
- 薫子の母、千鶴子が在宅介護を手伝うようになる
- 脳が機能していなくとも、手足のコントロールが可能であることを和昌が知る
- 手足のコントロールは、ハリマテクスの研究員である星野祐也の研究分野である
- 星野は和昌から、播磨家での作業を指示される
- 星野の恋人、川嶋真緒の登場
です。
つまりこの章で瑞穂は、自発呼吸が可能となります。
また、退院後に播磨家で徐々にトレーニングを積むことで。
手足を機械で動かすことも星野によって可能になっていきます。
人魚の眠る家のあらすじ:第三章~あなたが守る世界の行方~
ここから、徐々に話がミステリアスというか、何かが起こる予感を感じさせます。
川嶋真緒と星野が行きつけの店で久々に会います。
真緒は最近の様子から、星野のことを不審に思っています。
例えば
- メッセージの返答がない事がある
- 最近、二人がなかなか会えないこと
- 普段は仕事のことを生き生きと語るのにその日は違った
- 久々の再会なのに足早に別れようとする
といったこと。
そこで真緒は、タクシーで星野を追尾することにしました。
タクシーが辿り着いた先は、播磨家、つまり星野の勤め先の社長の自宅でした。
真緒は、星野が社長の自宅に通っていることを知ります。
また、星野はそのころ、瑞穂の手足の筋肉のトレーニングを行っています。
星野からすれば、社長の和昌から正式な業務であるとのお墨付きをもらっていることもあり。
自分の技術を試す絶好の機会です。
また、薫子が喜ぶ姿を見ることで、播磨邸での作業時間に星野は生きがいを感じ・・・。
「人魚の眠る家」の良い点は2つ
読み終えてよかったと思った点は
- 緻密な描写
- 臓器提供に対してのアプローチの仕方
の2つです。
「人魚の眠る家」の良い点その1:緻密な描写
第四章あたりから、徐々に話の展開が早くなります。
が、それまでの描写が丁寧なので感情移入しやすいです。
だからこそ、最後は感動・納得の終わり方をします。
薫子の苦悩
- 瑞穂の存在、薫子の価値観に対してよく思わない人がいること(和昌の父や、美晴の夫など。)
- 薫子自身も「臓器提供すべきでは」と密かに苦悩していること
- 瑞穂の容体がいつまでも安定しているとは限らないこと
伏線の回収
- 星野と真緒の恋の行方
- 宗吾ってどうして出てきたの?
といった、徐々に明らかになる薫子の思いや、読んでいて気になる点、これまでに
張られた伏線の回収が始まります!
そして、読み終えたときに
- 緻密さ、無駄のなさ
に気づくことと思います!!
疑問におもうところは全てスッキリします。ぜひぜひ、最後まで読んでみてください!
「人魚の眠る家」の良い点その2:臓器提供に対してのアプローチ
「人魚の眠る家」では
- 脳死、臓器提供
という問題について前半では少しだけ触れられますが、物語の後半まであまり議論されません。
このことが、難しい問題にアプローチしながら
- あくまでも小説として読者にとって読みやすくするため
の工夫なのかなと思います。
あえて、臓器提供というテーマを先延ばしにする
第一章でこそ和昌と薫子が、臓器提供をいったんは決断する場面がありました。
しかし、
- 四つ葉のクローバーのエピソードから瑞穂は優しい子であること
- 「瑞穂ならどう言うか」が想像つく
として、二人の意思は1日という短期間で決まりました。
薫子と和昌の話し合いが、あっさりまとまります。
しかし、瑞穂の手が動き、臓器提供の意思表示は白紙になりました。
物語の焦点は、瑞穂の介護
そのあとの物語は、
- 瑞穂の介護
が焦点となります。
そして読者を物語の世界に引き込んだところで
- 臓器提供の是非
- 臓器があれば生き延びられる人もいること
- 瑞穂をこのまま生かしておくのか?
- 単なる親の自己満足ではないか?
といった途中で生まれた葛藤もを含めて、物語の後半で議論されます。
確かに、瑞穂に事故があった序盤から。
いきなり脳死や臓器提供といった問題にアプローチするのは読んでいてしんどいですよね。
瑞穂の介護を通じた実体験や、家族の考えとかを知ったうえで、
- ある程度読者に理解を深めてもらったうえで、問題にアプローチしていく描写
が、この本を読みやすくしているのかなと思いますし、東野さんのスゴイところです。
人魚の眠る家のあらすじと感想のまとめ
第三章までのネタバレを含めて、思ったことを書きましたが、
- テーマは重いが、ミステリーとしての面白さはそのまま!
なのがスゴイところです。
また、読んでいて無駄な場面がほとんどないですし、第五章あたりからサクサクと読み進められる作品だと思います。
ぜひ、一度読んでみてくださいね。
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