小説「スマホを落としただけなのに」の前半部分のネタバレと感想を語りたいと思います。
スマホを落としてしまった場合にどのようなことが起こりえるか、なかなかのスケールと臨場感で読み手をビビらせてくれるミステリー小説。
北川景子さんが主演で、2018年に映画化されているので要チェックです。
※2020年1月追記:続編の公開も決定しました!
「スマホを落としただけなのに」の登場人物
「スマホを落としただけなのに」の登場人物を紹介します。
小説では、実際の場面と進行が、各人物の視点で描写されています。
- A = スマホを拾った男
- B = 稲葉麻美
- C = 警察
スマホを拾った男(A)
■スマホを拾った男
富田のスマホを拾った男。
母親は、「ネグレクト」であり、人の愛情というものが分からない。
クラッカーとして、多くの金銭と女性を手にしてきた。
稲葉麻美(B)の周りの人(赤線は主要人物)
■稲葉 麻美(いなばあさみ)
富田誠と交際中で、都内の祐天寺付近のマンションで1人暮らしをしている。
出身大学はR大学。派遣先として富田の会社に勤務した時に富田と知り合った。
■富田 誠(とみたまこと)
大手企業の営業として働いている。出身大学は、H大学である。
麻美からは頼りないとされており、プロポーズするも保留にされる。
■山本 美奈代(やまもとみなよ)
麻美の大学の同期で、かつてルームシェアしていた。
あることがきっかけで自殺してしまう。
■加奈子
麻美の大学の同級生。
フェイスブックにレストランの写真などを投稿するのが趣味。
■武井
麻美の初恋の人で、大学の先輩。
R大学からM商事にいったエリートサラリーマン。
一言で言えば、プレイボーイ。
警察関係者(C)(赤線は主要人物)
■毒島 徹(ぶすじまとおる)
中年の刑事。絵を描くのが上手である。
■加賀屋 学(かがやまなぶ)
毒島の相棒。若く、健気な男で
柔道の国体に出場経験がある。
「スマホを落としただけなのに」の第1章のネタバレ
1人の男が、スマホを拾う
1人の男が、ネットカフェにいるとき、着信音が鳴り出した。
その着信音が鳴るスマホは、昨晩のタクシーで拾ったものである。
スマホの待ち受け画像には、その男好みの黒髪の美人(=麻美)と。
にやついた顔をした男(=富田)とのツーショット写真が設定されている。
着信中のスマホの画面には「稲葉麻美」と表示されており、電話に出ると稲葉麻美は、かなり動揺した様子であった。
稲葉麻美が
『この電話は、富田誠のじゃないんですか』
と聞いたあと、麻美は男がスマホを拾ったことを知る。
男と稲葉麻美は、「拾ったスマホをどのように受け取るか?」についてのやりとりを交わして電話を切った。
スマホを拾った男は、麻美をターゲットに
男は、電話を切ったあと
- 黒髪の美人を自分のものにしたい
と思うようになる。
男はFacebookで、「稲葉麻美」と検索する。
しかし、本人の顔写真や個人情報が掲載されていなかった。
ツーショット写真に写っていた黒髪の美人が、麻美であることを特定できない。
しかし、Facebook上の友達に「富田誠」を見つけた男は、黒髪の美人が稲葉麻美であることを特定する。
さらに、男は富田誠の生年月日を入力すると、拾ったスマホのパスコードは解除されてしまった。
その後、男と稲葉麻美は駅前のカフェで会う約束をする。
男は富田誠のスマホを返す前に、バックアップを取った上で、スマホ解析ソフトとSNS監視ソフトを入れたのであった。
これで男は、富田誠のスマホで、下記のことが可能になる。
- 位置情報がわかるようになる
- LINEやFacebookは全部盗み見が可能になる
そして約束の時間になったが、男は麻美の前には現れず、店員にスマホを渡したのであった(実は他の客に紛れてただけ)。
これが全ての始まりである。
黒髪の美人の行方不明者が次々と発見
他方、神奈川の丹沢の山奥では、半白骨化した黒髪の長髪の持ち主の死体が発見されていた。
「スマホを落としただけなのに」の第2章のネタバレ
スマホを拾った男が、富田誠のクレジットカード情報を・・・
スマホが戻ってきた富田誠だが、次々に奇妙な出来事が起こる。
男は、麻美と富田のLINEを盗み見て、レディー・ガガのチケットを手に入れようと
していることがわかった。
そこで、富田の大学の同期で、コンサートの主催社に勤める「山田宏」のFacebookのなりすましアカウントを作り、富田に接近した。
富田は、なりすましアカウントでやり取りを重ねて、あっさりとクレジットカードの情報を含めた個人情報を男に送ってしまった。
サイバー犯罪の鉄則は
- 侵入した形跡を残さない
ことである。
つまり、騙したことに気づかれないために、男がネットオークションで手に入れたチケットを律儀(りちぎ)に富田に郵送する。
なお、富田誠が
- 麻美に1か月前にプロポーズしたこと
- 麻美が保留としていること
もここで明らかとなる。
麻美がSNSにハマる
ある日、麻美は大学時代の友人の加奈子と、イタリアンを食べに出かけていた。
加奈子と話しているうちに麻美は、初恋の相手である「武井」の存在を思い出したり・・・(このあとの伏線)。
麻美は、FacebookやTwitterで知り合った人と、恋人同士になるのが当たり前な時代であることを加奈子から知らされる。
そこで麻美は、加奈子に勧められて食事の様子をFacebookに挙げて、その後の「いいね!」の数を見てFacebookにハマる。
映画の話題等を投稿しては、「いいね!」をもらうことに快感を覚えていた。
スマホを拾った男は、当然それを見逃さず・・・
接触を図るために、なりすましアカウントで次々に麻美に友達申請を出す。
麻美は、Facebook にハマり、気が付くとメッセージのやり取りもするようになっていた。
友達の数も次第に増えていき、そのうちの一人の「小柳守」と映画の話題について、やりとりを頻繁に行うようになる。
プロポーズに対する麻美の葛藤
また、麻美はやりとりに没頭しつつ富田からのプロポーズについて考えていた。
麻美は、現在は新卒で入社した会社を辞めており、派遣社員として働いている。
富田のステータスからして、結婚すれば今より贅沢できるが、富田は頼りないという葛藤も生じていた。
そんな時に、富田がクレジットカード詐欺に遭ってしまい、80万円の請求が届いていた。
※男が、レディーガガのチケットを富田に送る際にクレジットカードの情報を盗んでいる。
富田の頼りないところや、過去の浪費癖が麻美にとって結婚を躊躇(ちゅうちょ)させるのであった。
丹沢の山奥で、次々と行方不明が発見される
一方、丹沢の山奥では新たに2体の死体が発見される。
さらには今後も被害者が増えることを匂わせる、人がちょうど1人入れる奇妙な穴が3つあった。
警察は、
- 第一章で見つかった死体を入れて計3人
- いずれも黒髪の長髪の持ち主であること
という状況証拠から同一犯であるものとした。
しかし、捜査は難航しており
- 下腹部を滅多刺しされていること
- 死体はいずれも全裸であり遺留品もない
ということ以外は被害者の身元すら分からない状態だった。
「スマホを落としただけなのに」の見どころ
「山田宏」のなりすましに、あっさり騙された富田誠。
カード情報を送ったのは流石に、ガードが甘いと思いますが。
「山田宏」がなりすましであることを疑う人はほとんどいないはず。
LINE・Facebookも解析ツールが第1章で入れられており。
富田誠のスマホのデータ・SNSは、すべて筒抜け。
これらを活用して、次々と男は、富田と麻美に接近していきます。
ソーシャルエンジニアリングの例
第3章以降で出てくる詐欺の手口に
- 「ソーシャルエンジニアリング」(人間の心理の弱点を突いた攻撃)
がありますが、文字通り「心理攻撃」なので、古典的ながら多くの人が騙されるかと。
■ソーシャルエンジニアリングの例
仕事中に、上司から一通のメールが来ました。

ちょっと確認したい書類があるから、〇〇のパスワードを教えて
あなたは、

上司の指示だしな・・・
と思って、疑いなしにパスワードを教えてしまいました。
つまり、「パスワードを教えて」と、信じてもよさそうな人に言われてしまったら。
人間はつい教えてしまいがちということです。
第3章以降は、「ソーシャルエンジニアリング」等で麻美に接近
- なりすましアカウント
- フィッシングメール
- ソーシャルエンジニアリング(特に重要)
でのトリプルコンボで、麻美や富田を完全に追い詰める展開は必見です。
そして、この後の見どころは
- 黒髪の美人好みの男に狙われた麻美は、無事生還できるか?
- 麻美と富田の恋の行方はどうなる?
- 殺人事件の犯人は無事、捕まるのか?
の3つです。
「スマホを落としただけなのに」の良い点・悪い点
「スマホを落としただけなのに」の良い点・悪い点を記します。
まずは、良い点から。
次に悪い点です。
<良い点>サイバー攻撃の実例が学べる。緊迫感は絶大
サイバー攻撃の実例が学べる。緊迫感は絶大です。
スマホを拾った男が、富田と麻美に接近する様は、恐怖そのもの。
「スマホを落としただけなのに」シリーズは、本作・2作目・3作目の3作ありますが。
サイバー攻撃の手口は、本作が最も作りこまれています。
最悪、こうなってしまう可能性があるという警鐘(けいしょう)になっていると言えます。
<良い点>結末は、誰も予想できない。
結末は、誰にも予想できません。
麻美がスマホを拾った男から逃げることができるか?
だけでは、本作は終わりません。
「ええっ~」となること間違いなしです。
<悪い点>富田のセキュリティ意識がなさすぎ。
富田のセキュリティ意識がなさすぎです。
もとを正せば、富田のスマホのパスコードが自分の誕生日という特定されやすいものでさえなければ。
男が簡単に麻美と富田に接近することはできなかったはずです。
スマホのパスコードが解除されれば、メールアドレス、電話番号が流出するので。
各種サイトのパスワードのリセット等も簡単に行えてしまいます。
フィッシングメールで、富田の連絡帳から、知人のパスワードを入力させると言ったことも考えられ。
二次被害、三次被害につながるのは当然です。
今回の出来事は、基本的には防げた。勉強にはなるけど、あまり現実的でないな~
というのが、正直な感想でした。
「スマホを落としただけなのに」の感想まとめ
改めて、セキュリティ意識の甘さが招く悲劇を実感させられました。
いい点を再掲します。
総括すると、実際に起こり得そうなサイバー攻撃の手口と迫力、結論が作りこまれていて素晴らしい作品なので、ぜひ読んでみてください。
スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
と、同時に
- パスワードが単純であったり
- 使いまわされていたり
- 長期間使用していたり
など、ついやりがちなことをやっていないかもう一度確認くださいね。
本作を読んだ後は、2作目と3作目も続けて読んでみましょう。
- 3作目の小説をこれから読みたい
- 1作目・2作目のあらすじを忘れた
- 暇だけどDVDをレンタルするのが面倒

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