2023年の4月から基本情報技術者試験の試験制度がガラリと変わることが公式サイト(IPA)にて発表されています。
変更点でとくに重要な部分をまとめると、下記の通り。
- 【試験時間の短縮】科目Aは、90分。科目Bは、100分の試験に
- 【科目Bの試験内容】情報セキュリティとアルゴリズムのみに
(ソフトウェアやデータベースやシステム戦略などは廃止) - 【科目Bの選択問題廃止】全問必答になる
サンプル問題を見た印象ですが、「1問あたりのアルゴリズムのトレースの量は減るが、5分で解くための練習が必要」と言ったところです。
2023年以降の基本情報技術者試験の試験制度と変更点
2023年以降の基本情報技術者試験の試験制度は下記の通り。
試験制度【セキュリティとアルゴリズム重視】
- 通年試験で事前予約制
⇒(「再受験規定(リテイクポリシー)を含む受験規約」は今のところ非公表
⇒個人的な予想だけど受験は2~3か月前に申し込まないと、できない制度かと - 科目Aと科目Bがあり、どちらも60点以上で合格
- 科目A/科目Bは、ともにマークシート
- 科目Aは、全60問90分で全問必答
- 科目Bは、全20問100分(8割がアルゴリズム、2割が情報セキュリティ)で全問必答
- 採点方式にIRT方式を採用。ひとことで言うと「受験者の出来/不出来で配点が上下する」
とくに、科目Bは、セキュリティとアルゴリズム重視の試験に変更されます。
次に、新旧でどう変わったか?を、科目A(旧:午前試験)・科目B(旧:午後試験)ごとに書きます。
科目A(旧:午前試験)の変更点
科目A(旧:午前試験)の変更点は下記の通り。
科目A | 旧制度 | 新制度 |
---|---|---|
試験時間 | 150分 | 90分 |
出題数 | 80問 | 60問 |
採点方法 | 1問1.25点 | IRT方式(受験者の出来/不出来で配点が決まる) |
出題内容 | 幅広い内容 (≒過去問のコピペ) | 変更なし |
午前免除 | あり | あり |
なお、午前免除の制度については科目Aでも引き継がれます。
※2 FEの午前試験免除制度は、科目A試験免除制度として継続します。免除期間など、制度の内容に大きな変更はなく、既存の講座認定や修了試験合格は引き続き有効です。免除制度の概要などについては、次のURLを参照してください。
「IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について」より引用
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_80tokurei/_index_tokurei.html
科目B(旧:午後試験)の変更点
科目B(旧:午後試験)の変更点は下記の通り。
科目A | 旧制度 | 新制度 |
---|---|---|
試験時間 | 150分 | 100分 |
出題数 | 11問中5問を回答 ※情報セキュリティとアルゴリズムは必答 | 20問 |
採点方法 | ブラックボックス(たぶんIRTだと思う) | IRT方式 (受験者の出来/不出来で配点が決まる) |
出題内容 | ①情報セキュリティ ②アルゴリズム ③C/アセンブラ/Java/Python/表計算 ④ハードウェア/ソフトウェア /ネットワーク/データベース ⑤システム開発/プロジェクトマネジメントなど | ①情報セキュリティ ②アルゴリズム |
変更点をもう一度簡単に書くと、下記のようになります。
- 【試験時間の短縮】科目Aは、90分。科目Bは、100分の試験に
- 【科目Bの試験内容】情報セキュリティとアルゴリズムのみに
(ソフトウェアやデータベースやシステム戦略などは廃止) - 【科目Bの選択問題廃止】全問必答になる
IRT方式とは?2023年の基本情報技術者試験から均等配点でなくなる
ところで、IRT方式って何?
よくわからんのだけど。
IRT(項目反応理論、”Item Response Theory”)をひとことでいうなら、「受験者の出来/不出来で配点を変えるよ」ってことです(知ってる人はここは読み飛ばしてくださいね)。
TOEICやITパスポートでは、IRT方式が採用されているみたいです!
全問正解しなくても、満点になるとよく言われています。
ここでは難しいお話は抜きにして、考え方をお話します。
マークシート式の試験で採点すると変な問題は出てくる
マークシート式の試験問題を100問作ったとします。
終わって採点、問題ごとに分析をするとこんな結果になるはず。
- 受験者のほとんどが正答している簡単な問題
- 全体の正答率が高い人だけが正答している難しめの問題
- なぜか正答率が低い人だけが正答している変な問題
- みんな正答できなかった問題
みんなできている/全体の正答率が高い人は正答できている問題は良問
このうち、試験として評価するべきなのは、「受験者のほとんどが正答している簡単な問題」と「全体の正答率が高い人だけが正答している難しめの問題」だけです。
「なぜか正答率が低い人だけが正答している変な問題」は、めちゃくちゃ難しい問題だけど、てきとうにサイコロを転がしてマークしたら当たっちゃった的なやつ(それか、基本情報技術者試験としてふさわしくない問題だったとか)。
「みんな正答できなかった問題」は、問題そのものがおかしい(文章として成り立ってないなど)と考えることができます。
IRT方式では、評価するべき問題だけに配点して、いわゆる「悪問」の配点は、ゼロに近くなります。
要するに配点が補正されるのがIRT【てきとうにマークしても意味ないかも?】
なので、あくまでもイメージだけど、IRT方式では、こんな感じで配点が補正されます。
- 【受験者のほとんどが正答している簡単な問題】40点
- 【全体の正答率が高い人だけが正答している難しめの問題】50点
- 【なぜか正答率が低い人だけが正答している変な問題】8点
- 【みんな正答できなかった問題】2点
わからない問題をてきとうにマークして正解しても点になるとは限らないってこと?
そういうことになります。
「どういう人が正解しているか?」で、配点が決まるのがIRT方式!
もしかしたら、「なんとか半分は正答できるけど、残り半分は適当にマークして何とか60点」的な考えだと、正答率のわりに意外と低い点数が出るような試験になる可能性ありです。
2023年の基本情報技術者試験の科目Bのサンプル問題
2023年の基本情報技術者試験の科目Bのサンプル問題がIPAで公開されています。
【サンプル問題】科目Bのサンプル
従来の午後試験では、大問1つにつき、小問が4~8問出題されていました(「問1」のなかに、小問が4~8問あるイメージ)。それが11題あって、アルゴリズムと情報セキュリティの2つは必答。
ただ、サンプル問題を見る限りだと、一問一答形式、20問出題されて20問回答します。
ポジティブにとらえれば、「1問あたりのボリュームが減った」ことに。ネガティブにとらえれば、「一問一答ゆえに逃げ道がない」ということになります。
2023年以降の基本情報技術者試験の個人的予想
ここからは、2023年以降の基本情報技術者試験の個人的予想です。
科目A(旧:午前試験)の難易度はさほど変わらない
まず、科目Aの難易度に変化はないことが予想できます。というのも、2022年までの試験にあった「午前試験免除制度」が「科目A試験免除制度」として引き継がれるから。
問題の出題形式や難易度を大きく変えてくるのは、考えづらいです。
「基本情報技術者試験の午前問題の勉強方法は「問題の暗記」を過去問5年分繰り返す」でも書いている通り、「過去問5年分の暗記」をしてしまえば問題なし。
ただ、採点がIRT方式に変更されるので、「まぐれで得点率60%」は危険信号。
きちんと、「過去問演習をこなした結果として60%正答すること」が、より肝心になります。
科目B(旧:午後試験の情報セキュリティとアルゴリズム)の1問ごとの難易度はやや易化?
「科目B(旧:午後試験の情報セキュリティとアルゴリズム)の1問ごとの難易度はやや易化するかも?」と予想できます。
実際に、サンプル問題の問4を見ても、トレースの量はそれほど多くないです(サンプル問題だからかもしれないけど)。
列をあらわすjは、配列の個数の5が最大値。行をあらわすiは、配列の要素数の5が最大値。
トレースを25回(ゼロは省けるので、実際は7回)、その結果を紙に書いていけば、正答できます。
科目Bサンプル問題の問4の解説
①配列5つを行列の形にする
(3, 0, 0, 0, 0)
(0, 2, 2, 0, 0)
(0, 0, 0, 1, 3)
(0, 0, 0, 2, 0)
(0, 0, 0, 0, 1)
②値を末尾(後ろ)に追加するので、最初に入れた値が頭になる
③matrix[i, j]がゼロの配列は飛ばして、 (i, j, matrix[i, j])の組を順番に書いたものがsparseMatrix
⇒iは、行数(たて)。jは、列数(よこ)
(i, j, matrix[i, j])
=(1,1,3)⇒いれる
=(1,2,0)⇒いれない
・・・をくりかえす
④{(1, 1, 3), (2, 2, 2), (2, 3, 2) , (3, 4, 3), (4, 4, 2), (5, 5, 1)}をsparseMatrixにいれる
⑤sparseMatrix{(),(),()}={(1, 2, 2, 3, 3, 4, 5), (1, 2, 3, 4, 5, 4, 5), (3, 2, 2, 1, 3, 2, 1)}
⇒正解は、イ
極端に難しく量が多い問題は出しづらいが、1問あたり4~6分しかない
大問形式でなく、一問一答形式になるので、極端に難しい問題や解くのに時間がかかる問題は出しづらい。出たとしても、どうせ、IRT方式が採用されているので、配点は低くなります。
とはいえ、1問あたり4~6分ペース。ゆっくりしているヒマはないです。
「楽になった」とか、「基礎をおろそかにしてもなんとかなる」というものでもなく。
「基本情報技術者試験のアルゴリズムの勉強方法はトレースが最重要。100%理解するまで手を動かす」でも書いてあるように「手を動かし紙に書いてトレース。「なんとなく」で終わらせない」ことがより肝心に。
「手を動かし紙に書いてトレースできる人が5分程度で答えられる問題」のアルゴリズムの配点は、結果的に高くなるはずだし、きちんと努力した人が報われる試験に。
「演習を重ねてトレースを正確にできるようにする」のは、試験制度が変わろうともアルゴリズムの一番の対策です。
【余談】基本情報技術者試験は旧制度と新制度で価値が変わるかも
実際の試験がどうなるかは、サンプル問題があるとはいえ、ふたを開けてみないとわからないですが・・・。
一つ言えるのは、通年試験になるので基本情報技術者試験の価値そのものが新・旧の制度で変わる可能性もゼロでないこと。
※現時点では発表がないですが、受験制限、あるいは2~3か月前の申し込みが必要であることが考えられ、何回も無制限に受けられるとは思えないですが。
出題形式も変わる上に、見方が変わる可能性は高いかと。
「どちらの試験制度の価値が高いか?」は、何とも言えないし、ひよこSEには判断できないですが。
「簡単になりすぎないこと(あるいはその逆)や、不公平感がないといいなぁ」と思ったりはします。
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